その名を世に知らしめた『ストレンジャー・ザン・パラダイス』『ダウン・バイ・ロー』などの初期作から“オフビート”の代名詞とも言える唯一無二の作風で、世界中の映画人から賞賛と敬意を寄せられてきた巨匠ジム・ジャームッシュ監督。4年ぶりの最新作では再び何気ない人々と日々の出来事を、思わずクスッとする絶妙なユーモアと飄々とした語り口で切り取り、優しさと美しさに溢れた物語に昇華させた。流行に流されず独自のスタンスを守り続けてきた監督自身とも重なる主人公パターソン。彼の物語は、情報や物で溢れた現代社会の中で、それぞれの豊かさを追い求める時代の風潮とも溶け合い、監督の集大成として迎えられたカンヌ国際映画祭ほか世界中の映画祭で、初期作にも通じる瑞々しさと、詩情に溢れた美しい傑作として大絶賛された。パターソンの日常が提示するのは、慌ただしい日々の中で、目を凝らし、耳を澄ませば、昨日と同じ日は1日としてないということ。そして、そこに自分らしい生き方を発見する手がかりがあるということに気づかせてくれる。
“パターソン”に住む“パターソン”という名の男の7日間の物語
ニュージャージー州パターソンに住むバス運転手のパターソン(アダム・ドライバー)。彼の1日は朝、隣に眠る妻ローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)にキスをして始まる。いつものように仕事に向かい、乗務をこなす中で、心に芽生える詩を秘密のノートに書きとめていく。帰宅して妻と夕食を取り、愛犬マーヴィンと夜の散歩。バーへ立ち寄り、1杯だけ飲んで帰宅しローラの隣で眠りにつく。そんな一見変わりのない毎日。パターソンの日々を、ユニークな人々との交流と、思いがけない出会いと共に描く、ユーモアと優しさに溢れた7日間の物語。
『パターソン』(2016年/アメリカ/英語/118分/原題:PATERSON)
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:アダム・ドライバー、ゴルシフテ・ファラハニ、永瀬正敏他
配給:ロングライド