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【見逃した映画特集2020】マウンテン・トリロジー

上映中~1月7日(木)上映

日時

上映中~1月7日(木)上映

料金

【特別料金】一般¥1,300/ユース(19歳~22歳)¥1,100/アンダー18(16歳~18歳) ¥1,000/シニア(60歳以上)¥1,200/ジュニア(15歳以下)¥800/UPLINK会員¥1,000/UPLINKユース会員¥900 ※サービスデー適用外

詳細 DETAIL

【上映スケジュール】

1月2日(土)~1月5日(火) 『山の焚火』
1月6日(水) 『緑の山』
1月7日(木) 『我ら山人たち』


スイスの巨匠フレディ・M・ムーラーの伝説の傑作が、35年の歳月を経てついに
デジタルリマスターでスクリーンに蘇る!

山、人、魂の交感

ダニエル・シュミットやアラン・タネールらと並び、1960年代後半に起こったスイス映画の新しい潮流“ヌーヴォー・シネマ・スイス”の旗手として知られる、フレディ・M・ムーラー。代表作である『山の焚火』は、1985年に発表され、ロカルノ国際映画祭で金豹賞(グランプリ)を獲得し、世界にムーラーの名を轟かせた。本作はスイス国内では25万人を動員し、スイス映画アカデミーよりスイス映画史上最高の一作に選定され、大きな話題を呼んだ。
本特集では、『山の焚火』と合わせて「マウンテン・トリロジー」を構成する2本のドキュメンタリー映画『我ら山人たち─我々山国の人間が山間に住むのは、我々のせいではない』(1974年)と『緑の山』(1990年)を同時上映。ムーラーが生まれ育ったスイス・ウーリ州の山岳地帯を舞台に、人と自然、そしてまるで現代を予知したかのような今日的問題を、描き出す。

山人たちの日常生活には、魔術的でアニミズム的な思考の糧がきわめて
現実的かつ合理的な思考と共存しながら根付いている—フレディ・M・ムーラー


【上映作品】

『山の焚火』(スイス/1985/スイス・ドイツ語/カラー/118分)

映画史に燦然と輝く“山”映画の最高峰、『山の焚火』。

ダニエル・シュミットやアラン・タネールらと並び、1960 年代後半に起こったスイス映画の新しい潮流「ヌーヴォー・シネマ・スイス」の旗手として知られる、フレディ・M・ムーラー。『山の焚火』は、1985 年に発表され、ロカルノ国際映画祭で⾦豹賞(グランプリ)を獲得し、世界にムーラーの名を轟かせた。広大なアルプスの山腹。人々から隔絶された地で、ほぼ自給自足の生活を送る4人家族。10代半ばの聾唖の弟を通して繰り広げられる人間の物語。雄大な自然に囲まれた美しく神話的な世界で、その中に潜む人間のリアリティが、画⾯から溢れ出す。
映画の舞台となった⼀軒家は、ムーラー監督が100軒以上も歩いて見た農家の中から見つけた小屋で、荒れ果てていたものを、増築したり家具や食器を運び入れたりして整えた。役者やスタッフは、山裾の宿に泊まり、ケーブルカーで小屋のある山上の撮影現場と行き来した。撮影のピオ・コラーディは、本作の前までは4本の長編映画を手掛けただけだったが、屋外での複雑な移動撮影、屋内での少ない光源の撮影などで見事に美しい映像を撮り上げた。本作を手掛けたのち、『緑の山』『最後通告』『僕のピアノコンチェルト』などといったムーラー監督作の撮影を担当している。音楽のマリオ・ベレッタは、本作で耳の聞こえない少年の置かれた状況を画面の中の動作から生じる音を効果的に作り出し、その後『最後通告』『僕のピアノコンチェルト』を手がけている。

【STORY】

アルプスの山腹に農場十代の姉、弟が両親と共に暮らしている。聾唖者の弟は学校に通わず、父親の手助けをして暮らしている。彼の勉強は、教師になる夢を諦めた姉が見ていた。その不自由さゆえに苛立つ弟の奇行に、時々頭を悩まされる家族だったが、皆、彼に愛情を注いでいた。人々から隔絶された地で、ほぼ自給自足の生活を送る家族は、平穏な日々を送っていた。だが夏も終わろうとしているある日、草刈り機が故障したことに腹を立てた弟は、それを崖から投げ捨て壊してしまう。父は激怒し、弟は家を飛び出し山小屋に隠れ、⼀人で生活をする。そこに姉は食料などを届けに行く。久しぶりに再会した⼆人は山頂で焚火を囲み楽しい時間を過ごす。そして山から下りてきた弟は、父に抱きつき、家族に再び平穏な日々が始まろうとしていた。しかし、やがて姉の妊娠が発覚し……。

監督・脚本:フレディ・M・ムーラー
撮影:ピオ・コラーディ
編集:ヘレーナ・ゲルバー
音楽:マリオ・ベレッタ
出演:トーマス・ノック、ヨハンナ・リーア、ロルフ・イリック、ドロテア・モリッツ、イェルク・オーダーマット、ティッリ・ブライデンバッハ


『われら山人たち─我々山国の人間が山間に住むのは、我々のせいではない』(スイス/1974/スイス・ドイツ語/カラー/112分)

ムーラーの故郷、スイスのウーリ州。変わりゆく山岳地帯に住む山人たちの生き方と精神世界に迫る。映画は地域によって三つのパートに分かれている。第⼀部の舞台はゲシェネンの渓谷。トンネル建設によって自然環境のバランスが崩れ、長年営まれてきた牧畜経営がやがて破綻。第⼆部の舞台シェーヒェンの渓谷では、伝統的な高原の牧畜経営が維持されている。ここでは、直接民主制によって多くの政治的選択が行われている。第三部の舞台マデラーナー渓谷のブリステンでは、牧畜経営だけでは共同体の運営が難しいため、住民の半数はよそへ働きに出ている。対象となる地域だけでなく、民俗学的なテーマや、共同体の閉鎖性など『山の焚火』に直接的に繋がる多くの要素がこの映画の中にはある。村人たちの語りが画面の「オフ」で聞こえるがゆえに、彼らの眼差しは無言で見つめるかのように観客へ投げかけられる。

監督:フレディ・M・ムーラー
撮影:イワン・シューマッハー
編集:フレディ・M・ムーラー、エヴェリーネ・ブロムバッハー


『緑の山』(スイス/1990/スイス・ドイツ語/カラー/133分)

アルプスの山間で持ち上がった放射性廃棄物処理場の建設計画。土地と自分たちのルーツを守ろうとする反対派と賛成派に分かれた住民たちを追ったドキュメンタリー。1988年、NAGRA(ナーグラ:国立放射性廃棄物管理協同組合)はニトヴァルデン準州ヴェレンベルクに最終廃棄物処理場を建設する計画を発表し、地域住民の抗議団体が形成される。ムーラーは支持者と反対派(特にヴェレンベルクに住むアルプスの農家)にインタビューする。リサーチと議論は、直接影響を被る人々、ヴェレンベルクで数世代にわたって暮らしてきた家族に焦点を当てる。彼らは、核(放射線)の恐怖を目前にし、今や自身のルーツと生活の地を奪われることに直面している。さらに本作は、政治家、地質学者、医学者など様々な立場の人々の話から、⼀過的で限定された地域の問題にとどまらず、時間の尺度としては人間の寿命をはるかに超えたスケールの問題を提起する。ムーラーはこの作品を「子どもたちと子どもたちの子どもたち」に捧げており、次世代に対して責務を負うべき大人たちに問いを突きつける。

監督・原案:フレディ・M・ムーラー
撮影:ピオ・コラーディ
編集:カトリン・プリュス