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ひかりのたび

1月25日(火)上映【1日限定】

© 2017 dream of illumination production committee. All rights reserved.

日時

1月25日(火)上映【1日限定】

料金

【特別料金】一般¥1,300/シニア(60歳以上)¥1,200/ユース(19歳~22歳)¥1,100/アンダー18(16歳~18歳)¥1,000/ジュニア(15歳以下)¥800/障がい者割引¥1,000/UPLINK会員¥1,000/UPLINKユース会員¥900 ※前売券・ムビチケ使用不可
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詳細 DETAIL

故郷に背く父、私は生きる、この土地を

人間の命にはまぎれもなく“価格”が付いている——
それに気づいた僅かな人間たちによって、
世の中は、静かに、大きく動かされてきたのではないか

とある地方都市に冷酷非情なやり方で成り上がった不動産ブローカーの男がいた。高校三年生の娘は父親が荒らしたこの町に愛着を持っている。表立たずに暗躍し町にとって異分子である男と、男の裏の顔に気付きながらも共に暮らす娘。父娘の交差する思いは紆余曲折しながらも結びついていく…。
不動産売買というテーマを巡ってモノの価値、さらには人間の本質的な真価を冷静に見極める怖さと危うさを描いた本作。“優しさ”と“怖さ”を兼ね備えた「金(マネー)」の原点を顧み、幸福を覆う不道徳の在り方を提示する。同時に利己主義ゆえ外の世界を見据える人間と、愛着や義務感から地元・ローカルを意識せざるをえない人間の対話にもなっている。
あえてカラーを排したモノクロームの丹念な演出によって未来や過去、現実や空想ともつかない曖昧で不確かな映像世界をエモーショナルに映し出す。
10年ほど前から中国資本による日本への不動産投資の話題を耳にする。とくに北海道の水源地を含んだ森林の買収が目立ち、目的は投資、居住、別荘など様々だという。この事実は顕在化されずじわじわと浸食されていくような恐ろしさがある。物語は一瞬の判断で死を悪用することを思いつき、その町における「目立たないが大きな影響力」を持つに至った、“故郷”を裏切り続ける男と、失われた“郷里”に焦がれる娘の二つの軸で構成される。

これからの社会での生き方のひとつである【パラレルキャリア】を体現する
新たなる才能・澤田サンダー監督

2007年に絵本「幼なじみのバッキー」を発表、岡本太郎現代芸術賞入選の経歴を持つ、新たなる才能・澤田サンダーの商業映画デビュー作。2010年に東京芸術大学大学院映像研究科に入学し、同年には短編作品『惑星のささやき』で伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞中編の部グランプリ受賞。そして2015年度の同映画祭にて本作で史上初となる二度目のグランプリに輝いた。
映画制作だけにとらわれないその在り方は、国内でも大ヒットした書籍「マネジメント」の著者ピーター・ドラッカーが提唱し、ロックバンド「クリープハイプ」のボーカルでありながら作家としても活躍する尾崎世界観氏も推奨する【パラレルキャリア】(本業を続けながら、本業以外にチャレンジすること。「副業」よりももう少し大きい概念)と一致する。
監督自身が不動産ブローカーとして働いた体験を元に着想したというオリジナルストーリー。立ち退き案件を取り扱った際にはポストを物色したり、行方の分からない対象者がいれば母親に接触をするようなハードな仕事内容を経験した。さらに対象者が路上生活を送る様を目の当たりにして【人間の命にはまぎれもなく価格が付いている】と実感したという。
映画祭開催の町、群馬県中之条町をメインロケ地とし誰もが持つ愛郷心や地域コミュニティへの帰属意識を通して郊外の暗部に切り込んだ作品が生まれた。

ヒロイン・志田彩良 ネクストブレイク女優の瑞々しい演技
個性溢れる俳優陣、スタッフが伊参に集結

本作にて長編映画初主演を果たしたのは、宮崎あおい、長澤まさみ、夏帆など多くの女優を輩出してきたティーンファッション誌「ピチレモン」の専属モデルを務めた期待の新鋭・志田彩良。圧倒的な透明感と瑞々しさたっぷりに悪の一面を持つ父に寄り添うヒロイン・奈々を演じる。『サルビア』(14)、『わたしのまち』(15)『キスは命がけ!』(16)などで注目を集めた彼女の満を持しての長編初主演。父との関係や進路に悩みながらも、町に留まることを決意する等身大の女子高生役に挑戦した。
父親の植田役はテレビ東京系「カンブリア宮殿」のナレーションでおなじみの高川裕也。『ソロモンの偽証』では問題児の父親を演じたバイプレーヤーが、裏がありつつも礼儀正しく誠実で奇妙な男を見事に体現している。
脇を固める俳優陣には、「花子とアン」ではクセのある女流作家役、主演作『アレノ』で高く評価され第30回高崎映画祭最優秀主演女優賞を受賞、讀賣テレビ系列にて放送されたバカリズム原作・脚本のドラマ「架空OL日記」出演の山田真歩が幼い息子を失い町を出る母親を繊細に演じた。『シン・ゴジラ』出演のベテラン・浜田晃が植田を良く思わない前町長役を務め、作品に重厚感をもたらせている。さらに宮藤官九郎作品に多数出演の瑛蓮、『暗殺教室』『ちはやふる』など話題作に出演し今後の活躍が期待される萩原利久が名を連ねた。音楽はアイドルグループ「乃木坂46」の映像作品をプロデュースする狩生健志が担当し、個性豊かに作品を彩る。

【STORY】

故郷”を裏切り続ける父の秘密、
失われた“郷里”に焦がれる娘の罪

四年前に町にやってきた植田は不動産業を生業としている。彼にはある噂が囁かれている。それは訳ありの土地に値段をつけて外国人に売っているというものだ。最近はダムのそばの医療センターの外国人雇用問題にも関わっているという話だ。元町長の三好は地元に愛着がなく土地を荒らすようなことをする植田を快く思っていなかった。
植田には妻と離婚後、男手一つで育てた高校三年生の娘・奈々がいる。奈々が下校しようと学校の駐輪場に向かうと何者かによって自転車が壊されていた。ファミレスでのバイトの時間が迫り困っていたところ、見かねた同級生の公介が送ってくれた。道中、公介に奈々は言う。「自転車を壊したのはきっとお父さんの仕事関係の人だってわかってる。お父さん、人を立ち退かせたりして恨みを買うことがあるから―」
来年の春に高校卒業を控える奈々は、幼い頃から父の都合で転校が続いた。この町は最も長く住み、慣れ親しんだ場所である。父のせいで嫌がらせをされることもあるが、町で働きたいという希望があった。
植田は以前町に住んでいた道子と駅前で落ち会っていた。道子は三年前に幼い息子を失った後、住んでいた土地を手放し植田に売っていて、三好や幼なじみの優子に会うために一時的に帰って来たのだった。優子は両親の死後、自宅の売却をしつこく迫る植田を毛嫌いしている。
ファミレスで働く奈々。その日は植田が車で迎えに来ていた。帰りの車内で二人は卒業後の進路のことで意見がぶつかる。植田は娘には地元から離れて東京に行ってほしかった。「金の心配はするな」と告げるが、町で暮らし続けたいという奈々の気持ちは変わることはなかった。
植田はブローカーとして自分が荒らした土地に残る娘のために、三年前のある夜の事故について打ち明けることにした―

『ひかりのたび』(2017年/91分/日本)
監督・脚本:澤田サンダー
出演:志田彩良、高川裕也、瑛蓮、杉山ひこひこ、萩原利久、Lilme、川崎誠司、宮本なつ、鳴神綾香、山田真歩、浜田晃
製作:小林栄太朗、畠中博英、木滝和幸
プロデューサー:木滝和幸
アシスタントプロデューサー:佐藤美智子
撮影:西田瑞樹
照明:中村晋平
録音:光地拓郎
サウンドデザイン:光地拓郎
美術:菊地実幸、安藤秀敏
スタイリスト:関敏明
ヘアメイク:須見有樹子
編集:山崎梓
音楽:狩生健志
助監督:地良太浩之
制作担当:阿部史嗣
スチール:轟あずさ
配給:マグネタイズ