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【特集上映】奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー セレクション

上映中~3月24日(木)

日時

上映中~3月24日(木)

料金

一般¥1,900/シニア(60歳以上)¥1,200/ユース(19歳~22歳)¥1,100/アンダー18(16歳~18歳)¥1,000/ジュニア(15歳以下)¥800/障がい者割引¥1,000/UPLINK会員¥1,100(土日祝¥1,300)/UPLINKユース会員(22歳以下)いつでも¥1,000

詳細 DETAIL

世代を超え敬愛される、世界映画史が誇る孤高の映画作家
魂揺さぶる珠玉の4作品がデジタルリマスターで甦る。

19世紀末にデンマークで生まれ、常に独創的で革新的な作品を生み出しながら、一貫して人間、特に女性の心の真髄をフィルムで捉え続けた、世界映画史が誇る孤高の映画作家カール・テオドア・ドライヤー。 ジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォー、イングマール・ベルイマンなどの巨匠たちからアルノ―・デプレシャン、ギャスパー・ノエといった現代の先鋭たちにまで多大なる影響を与え世代を超え敬愛されています。
大戦が二度起き変革の渦中の時代にあっても粛々と映画制作に情熱を注ぎ、79年の生涯で長編14作品を発表。被写体を見つめ、モノクロームの世界を巧みに操り、新たな映画芸術の可能性を示し続けてきました。
今回は、ゴダールが『女と男のいる舗道』で引用したことでも有名な『裁かるゝジャンヌ』とドライヤー後期3作品がデジタルリマスタリングされ、スクリーンに甦ります。映像表現のアプローチに多様な顔を持つドライヤー作品をとくとご堪能ください。

【上映日程】

3月11日(金) 『奇跡』
3月12日(土) 『裁かるゝジャンヌ』
3月13日(日) 『ゲアトルーズ』
3月14日(月) 『怒りの日』
3月15日(火) 『奇跡』
3月16日(水) 『裁かるゝジャンヌ』
3月17日(木) 『ゲアトルーズ』
3月18日(金) 『怒りの日』
3月19日(土) 『奇跡』
3月20日(日) 『裁かるゝジャンヌ』
3月21日(月) 『ゲアトルーズ』
3月22日(火) 『怒りの日』
3月23日(水) 『奇跡』
3月24日(木) 『裁かるゝジャンヌ』

カール・テオドア・ドライヤー
(Carl Theodor Dreyer, 1889年2月3日~1968年3月20日)

「映画は私の唯一の情熱だ」

1889年2月3日、コペンハーゲンで貧しい農民の出であるスウェーデン人の母とデンマーク人の地主の子供である父のもとに生まれる。父親が認知しなかったため私生児となり、経済的理由から1890年にデンマークのドライヤー家に養子に出され厳格な養父母のもとで育つ。なお18歳の時に、生母が既に死んでおり、彼女が不遇の人生を送っていたことを知る。学校卒業後はすぐに養父母の家を出て通信電話会社に就職。ほどなくしてジャーナリストに転身し、地方紙に匿名で演劇評を書き始める。その後、保守系の大手新聞会社に雇われ、当時最先端のスポーツの一つであった航空機に興味を抱き自らも気球飛行をするほどのめり込んだ。結婚するまで気球飛行のルポルタージュ等を雑誌に発表していた。
結婚後は急進派の新聞社に移り、ペンネームで映画評を書き始める。その映画評が大手映画会社の目に留まったことから映画の脚本執筆を開始。数多くの脚本を手掛けたあと、1919年に『裁判長』で監督デビューを果たす。2作目の『サタンの書の数ページ』を発表した後、デンマークでの映画製作状況が悪化し、スウェーデン・ドイツ・ノルウェーと国を越境して製作を続けることに。7作目である『あるじ』(25)のフランスでの大ヒットが『裁かるゝジャンヌ』製作へと繋がる。しばしば困難に見舞われながらも、『奇跡』がヴェネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞を果たす。切望していた「ナザレのキリスト」映画化実現を目前に控えた1968年3月20日に息を引き取る。享年79。

Filmography

■長編作品
1919 『裁判長』 Præsidenten
1919 『サタンの書の数ページ』 Blade af Satans bog
1920 『牧師の未亡人』 Prästänkan
1921 『不運な人々』 Die Gezeichneten
1922 『むかしむかし』 Der var engang
1924 『ミカエル』 Michael
1925 『あるじ』 Du skal ære din hustru
1925 『グロムダールの花嫁』 Glomdalsbruden
1928 『裁かるゝジャンヌ』 La Passion de Jeanne d’Arc
1930-31 『吸血鬼』 Vampyr
1943 『怒りの日』 Vredens dag
1944 『二人の人間』 Två människor
1954 『奇跡』 Ordet
1964 『ゲアトルーズ』 Gertrud

■短編作品
1942 『母親支援』 Mødrehjælpen
1946 『田舎の水』 Vandet på landet
1947 『村の教会』 Landsbykirken
1947 『癌との戦い』 Kampen mod kræften
1948 『彼らはフェリーに間に合った』 De nåede færgen
1949 『トーヴァルセン』 Thorvaldsen
1950 『ストーストレーム橋』 Storstrømsbroen
1954 『城の中の城』 Et Slot i et slot


【上映作品】

『裁かるゝジャンヌ』(1928年/フランス/モノクロ/スタンダード/ステレオ/97分/2Kレストア)

©1928 Gaumont

百年戦争で祖国オルレアンの地を解放に導いたジャンヌ・ダルクは、敵国イングランドに連れてこられ異端審問を受けることになる。足枷を付けさせられ裁判所の大広間に入り、ずらりと一堂に会した司教たちからのきつい尋問が始まる。ジャンヌは心身ともに衰弱し、拷問室でさらに厳しい強迫を受け気絶してしまう。衰弱しきり死への恐怖から司教たちに屈しそうになるが、神への信仰を思い出し、自ら火刑に処される道を選び処刑台へと歩いていく。
実際の裁判の記録である古文書をもとに、クローズアップを大胆に多用し“人間”ジャンヌ・ダルクを活写、ドライヤーの名を世界に知らしめ後世に語り継がれる無声映画の金字塔的作品。

1928年4月21日、コペンハーゲンのパラス劇場にて初上映される。フランスではカトリック教会からの抗議がありいくつか改変され上映された。またオリジナル・ネガが倉庫の火事によって焼失。未使用ネガを用いて第二編集版が作成されるも、そのネガも保管されていた現像所が火災にあい焼失してしまう。その後、1981年にノルウェー・オスロ近郊の精神病院の倉庫でオリジナル・ポジフィルムが発見された。今回の素材は2015年にCNCの支援を受けてゴーモン社によってデジタル修復されたもの。
なお伴奏音楽は、ボーランド出身で現在はフランスを中心に活動し、名実ともに今最も注目されているオルガン奏者の一人、カロル・モサコフスキによって作曲され、2016年にリヨン国立管弦楽団のコンサートホール「Auditorium」のオルガンで演奏、録音された。

監督・脚本・編集:カール・テオドア・ドライヤー
歴史考証:ピエール・シャンピオン
撮影:ルドルフ・マテ
出演:ルネ・ファルコネッティ、アントナン・アルトー


『怒りの日』(1943年/デンマーク/モノクロ/スタンダード/デンマーク語/モノラル/94分/デジタルリマスター)

©Danish Film Institute

●1974年ヴェネチア国際映画祭 審査員特別表彰

中世ノルウェーの村に、牧師アプサロンと若き後妻アンネの夫婦が平穏に暮らしていた。一方で、同じ村にいた老女ヘアロフス・マーテが魔女とされ火刑に処されることに。彼女は牧師アプサロンの弱みを握っていた…。ある日、アプサロンの前妻との一人息子マーチンが神学の勉強を終えて帰郷する。アンネはたちまちマーチンに惹かれ二人は親密な関係に。そんな折、アンネが発した言葉にショックを受けたアプサロンが急死してしまい、アンネが魔女として死に至らしめたと告発を受けてしまう…。陰影を巧みに使ったモノクロームの映像美で、魔女狩りが横行する時代の複雑に絡み合う関係性を映した衝撃作。

原作は16世紀に実際にあった話に基づいたハンス・ヴィアス=イェンセンの戯曲「アンネ・ぺーダースドッテル」。1909年春にコペンハーゲンで上演され、その際にドライヤーも観劇し大変関心を持っていたと言われている。アンネを演じたリスベト・モーヴィンは舞台や映画の役の経験はあったものの、当時まだほとんど知られていない無名の新人女優だったというが、ドライヤーが彼女のヴェールのかかったような目に魅せられ抜擢されたと言われている。
1943年11月13日にドイツ占領下のデンマークで封切られた。それ故かスタッフ・キャスト名はおろか、自分の監督名さえクレジットされていない。

監督・脚本:カール・テオドア・ドライヤー
原作:ハンス・ヴィアス=イェンセン
撮影:カール・アンデルジョン
時代考証:カイ・ウルダル
出演:リスベト・モーヴィン、トーキル・ローセ


『奇跡』(1954年/デンマーク/モノクロ/スタンダード/デンマーク語/モノラル/126分/2Kレストア)

©Danish Film Institute

●1955年ヴェネチア国際映画祭 金獅子賞/1956年ゴールデングローブ賞 最優秀外国語映画賞

20世紀前半のデンマーク・ユトランド半島に敬虔なクリスチャンのボーオン一家が、厳格な父親モーテンを筆頭に三人の息子、そして長男の家族と共に暮らしていた。長男ミッケルには妻インガーと子どもが2人おり、インガーは3人目を妊娠中だ。次男のヨハンネスは自らをキリストだと信じ、精神的に不安定な状態が長い。三男アナスは仕立て屋の娘に恋をしているが、父モーテンと対立する宗派の家のため父は良く思っていない。ある日、インガーが産気づくがお産は上手くいかず、子供を死産したのち自身の容態も悪化してしまい、帰らぬ人に。家族が悲しみに暮れるなか、次男ヨハンネスが失踪してしまう。しかしインガーの葬儀に、正気を取り戻した姿で突如現れるのであった…。演劇的目線で家族の葛藤と信仰の真髄を問うドライヤーの代表作であり傑作。

牧師でもあり劇作家でもあったカイ・ムンクが1925年に書いた戯曲「御言葉」が原作。死者が蘇るというショッキングな結末のためなかなか上演されなかった。またドライヤーの前に1943年にグスタフ・モランデルが映画化しているが、映画用に脚本がかなり練り直されていることなどからドライヤーはあまり高く評価しなかった。
1955年ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を、1956年にはゴールデングローブ賞で最優秀外国語映画賞を受賞している。

監督・脚本:カール・テオドア・ドライヤー
原作:カイ・ムンク
撮影:ヘニング・ベンツセン
舞台美術:エーリック・オース
出演:ヘンリック・マルベア、エーミール・ハス・クリステンセン


『ゲアトルーズ』(1964年/デンマーク/モノクロ/ヴィスタ/デンマーク語/モノラル/118分/2Kレストア)

©Danish Film Institute

●1965年ヴェネチア国際映画祭 国際映画批評家連盟賞

著名な弁護士カニングの妻であるゲアトルーズは、夫との結婚生活に不満を抱いている。二人の間に愛はなく、ゲアトルーズは若き作曲家エアランと恋愛関係にある。ある日、彼女の元恋人であり著名な詩人ガブリエルが帰国し祝賀会が催されるが、ゲアトルーズは体調を悪くし席を立つ。その後、エアランの伴奏で歌唱するも卒倒してしまう。翌日エアランが自分を愛していないことを知り、彼との関係を断ち、夫のもとからも去るゲアトルーズ。愛を探し求め続けたゲアトルーズの姿を完璧な様式美の画面におさめ会話劇に徹したドライヤー遺作にして集大成的作品。

今回の上映での『ゲアトルーズ』本編素材は、5か所の中間字幕が復元されたバージョンとなっている。2010年に日本国内で発売されたDVDはじめ、2015年のイギリス・BFIからリリースされたBD-BOXにおいても、使用されたマスター素材は削除されたバージョンであった。

監督・脚本:カール・テオドア・ドライヤー
原作:ヤルマール・セーデルベルイ
舞台美術:カイ・ラーシュ
衣装:ベーリット・ニュキェア
出演:ニーナ・ペンス・ロゼ、ベンツ・ローテ



配給:ザジフィルムズ