『詩人の血』にも登場した鏡というアイテムが今度は冥界へと続く扉となり、恐ろしくも優雅な旅路へと誘う。また、カーラジオから流れる詩などミステリアスかつ耽美な要素が散りばめられつつも、死神の付き人を思わせる黒装束のバイカーや街中での追走劇などが当時のパリの風景の中で描かれ、通俗性を兼ね備えた活劇としての魅力も充分。主人公オルフェを演じるのはジャン・マレー。死の王女役には『ブローニュの森の貴婦人たち』、ジェラール・フィリップと共演した『パルムの僧院』(1948)で知られるマリア・カザレス。異界の美しい住人を圧倒的な存在感で演じ切り、説得力を与えている。
『オルフェ』(1950年/フランス/モノクロ/95分/原題:Orphée)
監督・脚本:ジャン・コクトー
出演:ジャン・マレー、フランソワ・ペリエ、マリア・カザレス、マリー・ディア
撮影:ニコラス・エイエ
『没後60年 ジャン・コクトー映画祭』
配給:マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム