09.05金
09.06土
09.07日
09.08月
09.09火
09.10水
09.11木
インド映画史上初、第77回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した『私たちが光と想うすべて』。100以上の映画祭・映画賞にノミネート、25以上の賞を受賞し、70カ国以上で公開されるなど、インド・ムンバイ生まれのパヤル・カパーリヤーは、世界から熱い注目を集める新鋭監督だ。カパーリヤー監督は2021年に完成させた初長編ドキュメンタリー『何も知らない夜』で第74回カンヌ国際映画祭監督週間に選出され、ベスト・ドキュメンタリーに贈られるゴールデンアイ賞を受賞。山形国際ドキュメンタリー映画祭2023でも大賞であるロバート&フランシス・フラハティ賞を受賞し、ドキュメンタリー作家としても高く評価され、溢れる才能を見いだされた。
本作『何も知らない夜』は、カパーリヤー監督がインド映画テレビ技術研究所の学生であった自身の体験を元に映画化した作品。映画大学の学生寮から学生L(エル)の恋文が入った小箱が発見され、Lの手紙が語るカースト制度によって阻まれた恋人たちの苦難を背景に、2016年に実際に起こった政府への抗議運動、極右政党とヒンドゥー至上主義者による学生運動の弾圧事件の真実が描き出される。ダンスを踊り、ベッドに横たわりうたた寝をする大学生の若者たち、家族との食事会や婚礼などの日常の映像が、次第に学生たちの路上デモや警官たちとの緊迫した衝突シーンなどリアルな闘争の様子へ変化し、モノクロームと淡いカラーの映像が混ざり合い、フィクションと現実の境界線は失われていく。
舞台となるインド映画テレビ技術研究所は、インド政府から全面的に支援を受ける公立学校である。2015年、政府が研究所の所長にチャウハン氏の任命を強行したことで、学生たちは抗議運動を起こす。チャウハン氏はインド人民党員でありヒンドゥー至上主義組織、民族奉仕団の支持者であった。学生たちの抗議活動に多くの学者や文化人たちも賛同し広がりをみせるが、極右政党とヒンドゥー至上主義者による学生運動への弾圧事件へとつながっていく。
カパーリヤー監督は2017年頃から自分たちの身の回りや友人たちを撮影し、大学で友人たちが撮影した映像や古い家族のアーカイブ、ネット上の投稿画像などを収集した。記憶のアーカイブともいえる映像群からイメージを発見し、そこに架空のラブストーリーを加え、映像を再構築し生まれたのが本作『何も知らない夜』である。叶わぬ愛の物語と記録映像を通じて、インドの社会の問題を炙り出す。変革を望む学生たちの情熱や信念、映画への愛が、闇の中で光り深く心に迫る。
映画大学の学生寮の片隅にひっそりと置かれた小箱。その中から発見されたのは、学生L(エル)が密かに恋人へ綴った手紙だった。Lの手紙から、叶わぬ愛の背後にある社会的な問題が浮かび上がり、2016年にインドで実際に起こった政府への抗議運動や極右政党・ヒンドゥー至上主義者による学生運動への弾圧事件へとつながっていく・・・。
『何も知らない夜』(2021年/フランス、インド/ヒンディー語、ベンガル語/103分/1.33:1/パートカラー)
監督・脚本:パヤル・カパーリヤ-
撮影&編集:ラナビル・ダス
音楽:ドリティマン・ダス(Topshe)
手紙の朗読:ブーミシュタ・ダス
配給:セテラ・インターナショナル