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耳のきこえない父と7歳のコーダの娘
互いを思いあう静かな愛を描く感動作
聴覚障がいを持つ父と健聴者の娘の心温まる絆を描き、2025年4月に本国中国で初登場1位を獲得した感動作『愛がきこえる』(25)。北米をはじめ世界各国での公開が続々と決定するなか、日本でも間を空けずに同年5月に中国語・英語字幕版による1週間限定の最速上映を実施。大きな反響を呼び、このたび待望となる日本語字幕版での全国上映が実現する運びとなった。
ろう者の父シャオマー(小馬)とコーダ(Children of Deaf Adults/耳が聞こえない、または聞こえにくい親を持つ聴者の子ども)の娘ムームー(木木)。支え合って生きる父娘のささやかな日々は、5年前に出ていった母の来訪によって軋み始める。ふたりの愛は、最大の試練を乗り越えられるのか──。
シャオマーに扮するのは、世界的な人気を博すアイドルグループ「EXO」のメンバー“レイ”としても活躍するチャン・イーシン(张艺兴)。日本の人気ドラマ「プロポーズ大作戦」の中国リメイク版「求婚大作戦」(17)では主演を務め、『A LEGEND/伝説』(24)ではジャッキー・チェンと共演するなど俳優としても八面六臂の活躍を見せる彼だが、本作では従来の華やかなイメージを覆す生活苦の労働者に扮し、全身全霊の熱演を披露。幼い娘の幸せだけを願い、地べたを這いつくばっても必死に駆けずり回るシングルファーザーのどうしようもなく“生きた”表情や手話に乗せる生の感情──その一挙手一投足が、観る者の心を激しく揺さぶる。
シャオマーの愛情を一身に受ける天真爛漫な7歳の娘・ムームーに抜てきされたのは、新星リー・ルオアン(李珞桉)。人気ドラマ「慶余年〜麒麟児、現る〜」(24)に続く映画デビュー作となるが、冒頭から太陽のように輝く彼女の堂々たる存在感に魅了され、いじらしいほどに涙を誘う豊かな感情表現の数々に圧倒されるに違いない。イーシンとルオアンが体現するひたすらに娘を、父を、お互いを想う献身性の波状効果が、本作のドラマ性と観客の没入感をどこまでも高め、深い感動がこみ上げてくる一級のエンターテインメントに昇華させている。
各国で高い評価を受ける本作の監督を手掛けたのは、実話をもとにある男女の 10 年にわたる愛をつづり、社会現象を呼び起こしたヒット作『あなたがここにいてほしい』(21)のシャー・モー(沙漠)。感情の機微を丁寧に積み上げていく演出に裏打ちされたエモーショナルな作劇に定評のあるモー監督が同作のチームと再び組み、『THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女』(18)のホアン・ヤオ、ビビアン・ティエン、「あの日の君と」(25)のチャン・ルオナンといった多彩なキャストが脇を固める。さらに、米アカデミー賞作品賞ほか3部門を制した『コーダ あいのうた』(21)、吉沢亮が日本映画批評家大賞ほか各演技賞に輝いた『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(24)と同じく、当事者であるろう者の人々が俳優として多数参加しているのも本作の特長。本編終了後、温かくも真摯なメッセージと共に各々の実人生が描かれる優しさに満ちたエンドロールにも、ぜひご注目いただきたい。
【STORY】
「わたしが大人になったら、守ってあげる」
耳の聞こえない父・シャオマー(チャン・イーシン)とろう者のコミュニティで暮らす7歳の娘・ムームー(リー・ルオアン)は「私がいないとパパはお金を稼げない」と小学校には通わず、日々父親を支えていた。
そんな折、5年前に離婚して出ていった母親が「ムームーに“普通”の生活をさせたい」と引き取りに戻ってくる。彼女なりに娘の将来を考えての提案だったが、シャオマーは取り合わず、親権をめぐって裁判で争う事態に発展してしまう。娘との生活を守るべくシャオマーは新たに仕事を始めるが、耳が聞こえないことから職場でトラブルが相次ぎ、立ち退きを命じられる。追い詰められた彼は、意図的に事故を起こして自動車保険をかすめ取る闇ビジネスに加担してしまうのだった。
ただ一緒にいたいだけなのに、非情な運命に引き裂かれていく父娘。
分かちがたい絆で結ばれた2人の愛は、逆境を乗り越えられるのか──。
『愛がきこえる』 (2025年/中国/中国語/111 分/ビスタ/カラー/5.1ch)
監督:沙漠(シャー・モー)
出演:张艺兴(チャン・イーシン)、李珞桉(リー・ルオアン)
配給:マーチ