『死ぬまでにしたい10のこと』『マイ・ブックショップ』イザベル・コイシェ監督最新作
エンドロールが終わってもずっと心に残り続ける、
まだ誰も知らない、あなたの物語

複雑で変化の激しい世の中で、私たちに与えられているのは、生きていると感じさせてくれる儚い瞬間だけだ。別れは終わりではない。それは、静かに受け入れ、もう一度歩き出すための時間。イタリア文学の鬼才ミケーラ・ムルジャが晩年に遺した短編集『Tre ciotole』。死の直前に書かれたその物語には、痛みと優しさが同じ温度で息づいている。イザベル・コイシェは、小さなディティールを重ね合わせ、映画という視覚的言語でそのまなざしを受け継いだ。流れるようなカメラワークと親密なクローズアップは、人生の重大な局面と向き合いながら安らぎを求める女性の姿を、そっとすくい上げる。主演はイタリア映画界を代表する名優アルバ・ロルヴァケルとエリオ・ジェルマーノ。ロルヴァケルの繊細な表情と沈黙の演技、ジェルマーノの内面の葛藤を掘り下げる存在感が、マルタとアントニオの“静かな別れ”に深い陰影を与える。ローマの午後の光、石畳の質感、夜の静けさ。フィルム用ヴィンテージレンズを通して捉えた街の息遣いが、マルタの心の動きと重なり、そっと画面に滲む。エンドロールが終わってもずっと心に残り続ける、まだ誰も知らない、あなたの物語。


【STORY】
恋人との些細な口論の末、突然ひとりになった高校教師マルタ。がらんとした部屋で、食べ物の味も、光の色も、世界の輪郭さえも失われていく。そんな彼女が始めたのは──三つのボウルに食材を丁寧に盛り付ける、奇妙で静かな“儀式”。K-POPスターの等身大パネルとの対話、キッチンの光に気づく瞬間、ローマの街を自転車で駆ける時間。小さな行為の積み重ねが、やがて彼女を再び世界へとつなぎ直していくー。



『ムクドリと人生とレモンパスタ』(2025年/イタリア・スペイン/イタリア語/122分/スタンダード)
監督・脚本:イザベル・コイシェ
原作:「Tre Ciotole 3つのボウル 危機の1年のための儀式」ミケーラ・ムルジャ
出演:アルバ・ロルヴァケル、エリオ・ジェルマーノ、シルヴィア・ダミーコ、ガラテア・ベルージ、フランチェスコ・カリル、サリタ・チョウドリー
配給:チャイルド・フィルム