日時
12月25日(金)公開
12月25日(金)公開
『aftersun/アフターサン』に続く、新世代が映し出す“父と娘”のまなざし─
旅の目的地はネブラスカ州の“オマハ”
眩いほどの美しさと痛みに満ちた、生涯忘れられない“3日間”
もう戻らない親子の煌めきを切なくノスタルジックに描き、日本でも話題をさらった『aftersun/アフターサン』(22)。さらには疑似親子の間に芽生える情を見つめた『カモン カモン』(21)や『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(16)、共に過ごす時間で父の孤独が浮かび上がる『SOMEWHERE』(10)といった傑作群に連なる珠玉の一作が、この冬日本公開を迎える。ある家族の変わりゆく姿と、変わらない愛の形を83分の旅に綴じ込めた『OMAHA/オマハ』だ。

『OMAHA/オマハ』で堂々たる長編デビューを飾った新鋭コール・ウェブリー監督は「本作は、直観的な判断を超え、ある家族とアメリカ西部を旅しながらある家族を永遠に変える決断にいたる過程を描いている」と語る。「親が子の幸福のために想像を絶する現実と向き合うストーリーが、《家族愛》という普遍の真理を突きつける。愛情深い親に恵まれて生きてきたなら、親や子どもを愛し守ることが私たちの永遠の本質だ。本作は、この重大な人間の本質を突きつける。父親としての役割を果たすことが絶望的になった時の人間性を描き出す」
経済格差が急速に進み、「貧困」が日常に食い込むようになった昨今。安寧は遠く追いやられ、今日という日を全うするだけで精一杯な時代に、個人が家族をどう守れるだろう?
一人の親が3日間の彷徨の末にたどり着いた愛のゆくえを真摯に、私たちと同じ地点から見つめた『OMAHA/オマハ』。鋭い美的感覚に裏打ちされた洗練×郷愁の《映像》、新鮮味と感動が両立した強度の高い《物語》、そしていまの世が必要とする《意義》──
どの瞬間も愛さずにはいられない、必然にして特別な一作が誕生した。


2008年・アメリカの片田舎。母を亡くし、親子3人で身を寄せ合って生きてきた父(ジョン・マガロ)と9歳の娘エラ(モリー・ベル・ライト)、6歳の息子チャーリー(ワイアット・ソリス)。ある夏の日の早朝、父はぐっすり眠っていたエラとチャーリー、愛犬レックスを起こしてオンボロの車に乗せる。エンジンは一発ではかからない。父とエラが一緒になって押し、ようやく車は動き出した。さぁ家族旅行に出発だ!
でも今日は誕生日でもなければ記念日でもない、普通の日。こんな早くから一体どこに向かうのだろう?
気になって聞いても、父ははぐらかして答えてくれない。「遊園地に行くのかも!」とはしゃぐ弟とは対照的に、エラは突然の出来事に戸惑っていた。道中で何度か真剣な表情で電話をする父、出発の直前に訪ねてきた保安官、言い知れぬ不安・・・・・・。お菓子やアイスを買ってもらい、ママが好きだった思い出の曲をカーステレオで流して、皆でハンバーガーを食べてキッズスペースで思いっきり遊び、凧揚げをして──。家族で過ごす楽しいドライブの奥にいつもと違う何かの気配を感じ取り、「私たち引っ越すのかも」とつぶやくエラ。そんな気持ちを察してか、ようやく父は行き先がネブラスカだと教えてくれた。でもそれだけ。どうしてそこに向かうのか、何があるのか子どもたちにはまるでわからない。

車窓から「動物虐待防止協会」という看板が見えたとき、父は不意に車を停めた。「すぐ戻るから車に乗っていなさい」と言い、レックスを建物の中に連れて行こうとする。心配でたまらなくなり、思わず車を降りるエラ。
パパは怒ってるの? さっき私が「犬に人間の食べ物をあげちゃダメ」と言ったから? どうして離ればなれになんかするの? 私たち、いい子じゃなかった・・・?
必死にレックスを連れ戻そうとするも引き離され、ただ「すまない、これが最善なんだ。許してくれ」と繰り返す父。エラとチャーリーの願いは聞き入れられず、レックスを置いて車は再び動き出してしまう──。
その日の夜。家族はプール付きのモーテルに泊まることになった。まだ旅は終わらないと言う父。ネブラスカはずっと先だからと。ショックから立ち直れず「レックスといたい」と言うチャーリーに、父は哀しげな表情で「物事はいつも思い通りにはいくとは限らない」と返すのだった。深夜、子どもたちが寝静まった後で彼の苦悶と本音がこぼれ出る。「わからない、どうしたらいいんだ。教えてくれ。どうすればいい?」と。

次の日、給油所で出会った女性に「ネブラスカに行くなら、オマハの動物園に寄ってみて」と教えてもらったエラは、父にそのことを話す。何気ない会話のつもりだったが、わずかに父の表情が曇ったように見えて──。その後、走行中にエラが車の窓から顔を出していると、普段は穏やかな父に激しく叱られてしまう。危ないことをしてしまったと反省しつつも機嫌が悪い父におびえてすっかりしょげてしまい、涙ぐむエラ。チャーリーがその場を取りなし、車内には再び明るい空気が戻る。哀しい出来事などなかったかのように、くだらない話題で盛り上がる親子3人。その後、腹ごしらえにランチを買おうとスーパーに立ち寄るがお金が足りず、父は子どもたちに気づかれないようにこっそり自分の弁当を戻す。努めて元気に振る舞い、サプライズで動物園へと連れてゆく父。初めての場所にはしゃぐ子どもたち。だが少しずつ、旅は終わりへと近づいていた。次に父が車を停めるとき、姉弟はその哀しい真意を知る──。



『OMAHA/オマハ』OMAHA
(2025年/アメリカ/英語/83分/ビスタ/5.1ch/PG12)
監督:コール・ウェブリー
出演:ジョン・マガロ
日本語字幕:藤本聡
提供:ニューセレクト
配給:スターキャットアルバトロス・フィルム