日時
上映中~4月28日(木)
料金
一般¥1,900/シニア(60歳以上)¥1,200/ユース(19歳~22歳)¥1,100/アンダー18(16歳~18歳)¥1,000/ジュニア(15歳以下)¥800/障がい者割引¥1,000/UPLINK会員¥1,100(土日祝¥1,300)/UPLINKユース会員(22歳以下)いつでも¥1,000
▶オンライン販売一部再開のお知らせ
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1996年4月28日日曜日。オーストラリア、タスマニア島、世界遺産の観光地ポート・アーサー流刑場跡で無差別銃乱射事件が発生した。死者35人、負傷者15人。コロンバイン高校銃乱射事件より3年前、2倍以上の死者数、銃規制の必要性を全世界に問いかける先駆けとなった事件だった。当時27歳の単独犯マーティン・ブラインアントの思想的な動機や背景が不明瞭であることも拍車をかけ、新時代のテロリズムの恐怖に全世界が騒然となった。
“ポート・アーサー事件“から四半世紀——このオーストラリア史上最も暗く、不可解な事件を真正面から描き切ったのは鬼才ジャスティン・カーゼル。カンヌ映画祭国際批評家週間特別賞を受賞したデビュー作『スノータウン』、前作『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』ではオーストラリア国内の歴史上の事件・人物をオルタナティブな視点で再定義する野心的な諸作をインディペンデントな制作スタイルで撮り、各国映画祭・メディアでその破格の映像美学と演出手腕が賞賛を集める一方、マリオン・コティヤールとマイケル・ファスベンダーを主演に迎えた『マクベス』でフランスに、さらに『アサシン クリード』ではハリウッドに進出。インディペンデントとメジャー、国内と国外の間を行き来し、唯一無二のキャリアを重ねる若き巨匠が、自身の最高傑作と語るのが本作だ。オーストラリア国内ではいまだ多くの議論が交わされ続けているセンシティブな事件の〈真実〉に迫るため、カーゼル監督は彼の〈日常〉を淡々と、しかしサンスペンフルに積み重ねてゆく。物語を紡ぐこと、スペクタルとして消費することこそが、暴力なのだと言わんばかりに。ひとつのパーソナリティを丹念に剥き出しにしてゆく、途方もなく緻密で繊細なプロセス。その真に倫理的な試みは、国内のジャーナリズムからも高く評価され、オーストラリア・アカデミー賞で最多8冠、作品賞ほか主要部門を総なめにした。どうして凶悪犯罪はなくならないのか——見るもの全てに解けない問いを否応なく突きつける鈍重な傑作が誕生した。
何より「普通」の人生を求めていた彼は、なぜ銃を求め、いかに入手し、犯行に至ったのか。現代に蔓延する思想なきテロリズム、際限のない暴力の連鎖——解けない問いそのものを体現するかのような鬼気迫る演技で主人公ニトラムを演じたのは、ジョーダン・ピール、ショーン・ベイカー、ジャームッシュ、サフディ兄弟、コーエン兄弟はじめ現代の名匠たちの作品への出演が相次ぐ注目度No. 1俳優ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。内面に巣食う孤独と劣等感、屈折した男性性とナルシシズムを痛々しいまでのナイーブな表情と身振りで表現し、見事カンヌ国際映画祭、シッチェス・カタロニア映画祭などで主演男優賞を受賞。『インドへの道』でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、テレビドラマ「ジュディ・ガーランド物語」ほかで3度にわたりエミー賞を受賞した名優ジュディ・デイヴィスなどオーストラリアを代表する名優たちによる主人公の周囲の人々による怪演のアンサンブルも見逃せない。
90年代半ばのオーストラリア、タスマニア島。かつて囚人の流刑地だった、観光しか主な産業がない閉塞したコミュニティに暮らす 20代半ばの青年。メンタルヘルスの問題を抱え、 母親から半ば強制的に抗うつ剤の薬を飲まされている。子供の頃から好きだった花火遊びをやめられない彼は、近所からは厄介者扱いされ、同級生からは本名を逆さ読みした蔑称“ NITRAM ”と呼ばれバカにされている。父がコテージを買ったら牛を飼いたい、ジェイミーのようにサーフィンがやりたい、などさまざまな願望を持っているが、親はコテージを買うことができず、母親はサーフボードを買ってくれない。なにひとつ思い通りいかず、何をしてもうまくいかない日々。サーフボードを買う資金を貯めるため、芝刈りの訪問営業を始めた彼は、ある日、ヘレンという女性と運命的に出会い、恋に落ちる。しかし悲劇的な事件をきっかけに、彼の精神は大きく狂い出す……。
『ニトラム/NITRAM』(2021年/112分/オーストラリア/英語/1.55:1/原題:NITRAM)
監督:ジャスティン・カーゼル(『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』『マクベス』)
出演:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(『スリー・ビルボード』『ニューヨーク 親切なロシア料理店』)、エッシー・デイヴィス(『ベイビーティース』『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』)、ジュディ・デイヴィス(『マリー・アントワネット』『天才スピヴェット』) 、アンソニー・ラパリア(『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』)
日本語字幕:金関いな
配給:セテラ・インターナショナル
後援:オーストラリア大使館