(C)「幻を見るひと」製作委員会
日時
7月5日(日)上映
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7月5日(日)上映
千二百年の歴史を持つ古都、京都。 豊富な地下水をたたえた京都は、ベネツィアに比すべき水の都でもある。 その京都の水音に耳を澄ます詩人がいる。 現代日本を代表する詩人、吉増剛造。 詩人が発見した東洋の古くて新しい精神を映像化する前代未聞のドキュメンタリーが、ここに完成した。


冒頭、映画は東日本大震災の津波の映像(国土交通省協力)で始まる。この映画のクライマックスで誕生する吉増剛造の新作「惑星に水の木が立つ」は、詩人の長い苦闘を経て完成した。吉増は2011年の東日本大震災以降、詩が書けずにいた。「人間のいのちの始まりに羊水があり、産湯があり、終わりに唇をしめら す末期の水がある(吉増談)」人間にとって命の源でもある「水」は古今東西、詩人にとって重要な題材となってきた。しかし大津波の爪痕を直に見た詩人は、すべてをはぎ取っていく「水」の衝撃に自らの言葉を失う。吉増は、詩を書く代わりに昭和の哲人・吉本隆明の詩を米粒大の文字で写経のように毎日書き写し始める。その不思議で魅力的な現場をカメラは捉える。本人が「怪物くん」と呼ぶ4年がかりで書かれた「詩の傍らで」は、 700枚近くに達した大作である。そこでは日本の代表的歌人・与謝野晶子(1878〜1942)の肉声が響き渡り、サヌカイトが鳴り、ついにはアクション・ペインティングの創始者ジャクソン・ポロック(米・ 1912〜1956)のようにインクを紙面にたたきつける異様な光景が広がって行く。書くという原稿を逸脱して一枚の紙に時間が堆積しオブジェのような状態を呈するのだ。それは長い時間の「手習い書」となり、新作への胎動へとつながった。あるとき、「京都には琵琶湖(日本一広い湖)と同じ水量の地下水がある」と知った詩人は京都の水脈に新たな詩の創作の活路を求める。詩人の触手は巨大な水のゆりかごをぶらさげている京都の水に届きはじめる。そこで吉増の前に現れたのがノーベル文学賞を受賞した川端康成の幻影だった。京都に逗留し創作活動に励んだ川端康成、その幻を見る才能に詩人は共振し、自らの詩の創作の糸口を手探りで見つけていく。ついに詩人の触覚が触れたのは東洋の大精霊である水の神、龍だった。吉増は水の運命の声を聴き、筆をとる。この映画で描かれる吉増剛造の物語は、創作の絶望の淵に立った詩人が「新たな生命を得ていく」道筋を示してくれる。その背景を川端康成のノーベル文学賞受賞の理由となった傑作「古都」のように京都の四季の風景、禅寺、枯山水が艶やかに彩っていく。





『幻を見るひと〜京都の吉増剛造〜』(2017年製作/107分/日本)
監督・編集・プロデューサー:井上春生
エグゼクティブプロデューサー:城戸朱理
出演:吉増剛造
配給:ハグマシーン
配給協力:一如社